主人公は鬼太郎。
鬼太郎の同人作品なのだからそれは当然として、悪魔くん初め、いろんな妖怪もののキャラクターたちが画面の中に同居している。
3作目「ゲゲゲの鬼太郎」が放映されヒットしていた影響か、以前にアニメ化されていた妖怪ものも人気が出ており、「ドロロンエンマくん」「こてんぐテン丸」を合わせて、当時「妖怪退治御三家」とも言われていた。
そんなわけで、この時期の同人作品でこの3作品が共演しているのは、結構めずらしくない。
さらに「悪魔くん」のテレビ放映が始まってからは、悪魔くんも同じ画面に並ぶようになった。
特に鬼太郎とは、いろいろな意味で馬が合うだろうなと言うことが容易に想像できるので、親友同士と解釈されている。
しかし、作者が同じならまだしも、生まれも育ちも全く違うキャラクター同士がすんなり同画面に収まると言うのも、なかなかスゴイ眺めである。



「黒い聖母」は、キャラクターごとに担当を決めて作画をした。執筆者は10人を超える大合作である。
ページ単位でなくキャラ単位なので、絵コンテをもとに各自が自分の持ち場を埋めていく方法をとった。
原稿をバトンタッチして完成させてゆくことになるが、何といっても総ページも執筆者も多過ぎる。
ので、定期的にN区の某公民館に集まっての作画大会となった。
同時に、本の完成を待っていて下さる予約者の皆さんに進み具合をお知らせするため「月読温泉だより」と言う小さな通信紙を発行した。
そして完成時には、予約者の方々をお招きしてミニイベントを開催。小さな会議室で、トーク・ビデオ上映・アトラクションにビンゴと言う、後のら・むうんイベントフルコース内容であった。
いろいろな意味で、「黒い聖母」は源流となるものだったんだなと、しみじみ思う。



マリアがグルントーヘルの暗示から覚め、正気を取り戻すシーン。
冷たくきつい顔立ちが一変し、無防備な泣き顔になる。
兄であり王であるクラウン・ベルにしがみつき、「兄様…!」
どこかで見たこんな場面?
「HAUNTEDじゃんくしょん」の青はんてん子が、光宮のマインドコントロールから覚めて赤マントに抱きつく場面。これは実は「マリア」のパロディなのである。
ちなみに、どっちも兄妹。そう言えば、「ラルフィリア・サーガ」の王様とユーリも兄妹だし、「緋翔伝」の夏木と瑞穂はブルーピース同士で魂の兄妹。
…いいんだろうか…。



悪魔くんは近江真吾?クラウン・ベルはラルフィリアの王様じゃなかったの?
はい、答えはこちら。
「HAUNTEDじゃんくしょん」とはちょっと別設定で、原作者いわく「パラレルってるの」とのこと。
言うなれば番外編で、近江真吾が悪魔くん役として出演したようなものだそうだ。クラウン・ベルも、バンパネラ・クラウン役で出演していることになる。
ま…確かに2人とも役者だったりする。



ずば抜けた知能と的確な判断力、そしてあまりにも真っ直ぐな瞳を持ったテレビアニメ版「悪魔くん」は、救世主を探していたファウスト博士に見出され、小学生の幼さで十二使徒と呼ばれる12人の悪魔と正規の契約を結んでしまう。
十二使徒はもともと、争いや人間への過干渉を好まない少数派の悪魔たちで、契約者と言うよりは、幼い救世主の「平和な世界を作りたい」と言う一途さに共鳴して集まった者同士と言ったほうが近い。
いつの世も、「理想」と言う言葉には「遠さ」が無言のうちに含まれている。たどり着きたい場所への、届かない距離を指して「理想」と呼ぶのかもしれない。
その遠さに向けて歩みだす勇気と実行力を分かち合い、同じ戦を戦った仲間は、どれだけ大切なものだっただろう。
「夢よ届け、君の心に」
これはアニメ版の次回予告に使用されたキャッチだったが、この言葉に「悪魔くん」が集約されている気がしてならない。
悪魔くん自身も、十二使徒を召還するときは「集え友よ!」と呼びかけていた。
こう言っちゃ悪いが、「出でよ!」でぽんぽん呼び出される真吾VSメフィストブラザーズとはえらい違いである。



真吾は幼い頃から魔術に親しんできた。あまたあるオカルト系情報の中から「正確な」知識を選び取り、身につけてきたのだから、やはり十分な資質はあったのだろう。
とは言え、「悪魔くん」の原作では超天才児(と言うより異能児)として描かれているが、うちの真吾君はそこまでフっ切れてはいない。確かに頭はいいが普通の人間である。
並みの高校生が英語で苦労している時に、ドイツ語の文献を「時間かかって参っちゃうな」と言いながら辞書片手に読み解いてしまえても、魔族相手のゲームに片っ端から勝利を収めても、苦悩のない人生が送れるわけではないのだ。
(ただ、「HAUNTED〜」では、しばしば遥都たちを助けに現れ「お前学校は?」と突っ込まれていたが、高校の教育課程を消化できなくて苦労することはなくて済みそう。)




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