「…何故戻って来たの。また人を信じるというの?」
向かい合う宿木と宿主。
笠井監督は、自分を殺そうとするほど追い詰められていたマリアの苦しみを思い、涙を流す。
予想もしなかった反応に困惑し、毒づくマリア。「私はあなたの闇よ、哀れみなんて御免だわ!」
「…御免なさい、可哀想なマリア。私は、こんなに温かなものに包まれて生きていることを、もう少しで忘れてしまうところだった」
自分とマリアは互いの半身、どちらが欠けても「笠井監督」は帰ってこない。一緒にもう一度、本当の闇(絶望)と戦おう…
固く握り締めていた剣が、マリアの手から滑り落ちる。
笠井監督の差し伸べた手がマリアの心を溶かし、聖母は自ら監督の中へ帰っていった。
「信じられん、あれほど痛めつけた魂が息を吹き返すなど!」
逆上し腕力に訴えようとするグルントーヘルの前に、呪縛を解かれたクラウン・ベルが立ちはだかった。
激しく切り結ぶ両者。
一度はクラウンベルに追い詰められたグルントーヘルだったが、本体を城のどこかに隠しているため致命傷に至らない。
それに気づきすかさず指示を出す悪魔くん。猫娘の鏡の力(照魔)に映し出された本体のありかに、鬼太郎の召還した剣が深々と突き刺さる。
ありえない方向からの反撃に体の自由を奪われたグルントーヘルを、クラウン・ベルのレイピアが両断した。断末魔の悲鳴と共に城が崩壊し、悪魔は自らの城を墓標に葬り去られたのだった。
クラウン・ベルの異空間移動のルーンによって城を脱出した一同は、無事と再会を喜び合った。
グルントーヘルの消滅ともに、全ての魔法が無効になり消された記憶も甦る。まさに悪魔から命を奪い返したのだ。
互いが互いにとって大切なものであることを確かめ合い、出会えた幸せを噛みしめるのであった。
その笑顔の中で、この一件が、これから来るであろう聖戦の兆しのひとつに過ぎないことを悟る幼い救世主。重すぎる荷を負った小さな肩に、森の少年がそっと手をかける。
「悪魔くん。一人じゃ…ないよ」
クラウン・ベルも、生身の人間でありながら先陣を切って戦いに身を投じた悪魔くんに感謝と敬意を示し、一族の変わらぬ友情を誓った。
<黒い聖母
1 2 3 番外>